職能給と職務給 ~中途採用・転職者をつかむ評価制度とは~

 

雇用が流動化し、従来の終身雇用制度が瓦解しつつあり、中途採用に力を入れる企業が増えています。それに伴い、終身雇用制を前提とした職能型の賃金から、能力主義の職務型の賃金へと転換する動きが出ているのです。本記事ではまず転職者側からみた給与の在り方、そして職能型と職務型それぞれの制度の歴史的背景やメリット・デメリット、給与水準の設定の仕方についてご紹介します。

 

目次

 

転職者が気にする賃金・労働条件

皆さんは転職者が何を重要視して転職先を決定しているかご存知でしょうか?もちろん仕事内容・職種や職場の雰囲気も重要ですが、やはり労働者にとって賃金・処遇は大きな関心事の一つであり、転職先を決定する上での重要な判断材料の一つになります。実際、厚生労働省による調査では、自己都合による離職理由の第1位に「労働条件が良くなかったから」(27.3%)、第3位に「賃金が低かったから」(25.1%)があげられています。また、転職先を決定した理由としては「仕事の内容・職種に満足がいくから」(40.8%)で最も高く、次いで「自分の技能・能力が活かせるから」(37.5%)、「労働条件(賃金以外)がよいから」(24.9%)となります。

総じて転職者は自身の能力を活かすことが出来て正当に評価されやすいと感じる企業に惹かれる傾向があります。求人広告の中でも賃金・処遇は労働者が注目するポイントであるといえるでしょう。

 

離職理由

 

現在の勤め先を選んだ理由

(参考:厚生労働省 平成27年転職者実態調査の概況)

 

転職者に魅力的な賃金・賞与の決定方法

では転職者の評価制度はどのように設定すればよいでしょうか。それぞれが異なる前職のノウハウや経験・知識を持つ中途採用者の賃金は新卒者の賃金と異なり一律で設定することが難しいため、転職者個人が納得する賃金設定が重要になります。賃金を設定する方法としては、能力に応じて同年次入社者と異なる基本給を設定し、賞与や手当を考慮することが一般的です。雇用は確保したいものの能力が測り切れない場合は、前職と同賃金を手当で保証したり使用期間を設けて一定期間だけ給与を下げたりするなどの方法がよくとられます。スキルを持つ中途採用者に対して通常社員とは異なる年俸制を別に導入する企業も存在します。

基本給や残業代、賞与の有無は求人広告にわかりやすく明記し、転職者と企業側に齟齬がないようにすることで、ミスマッチを減らし、転職後の満足度を高めることができます。入社後従業員を評価する際は、社内独特の制度や仕事の流れに慣れる前の転職者に対し、一時金を支払うケースもあります。スキルや経験があるとはいえ、急な成果主義で測定するのではなく、在籍している従業員とのバランスを考慮した賃金や評価制度にする必要があります。

そもそも従業員の評価制度はどうすればよい?

少子高齢化が進み、労働力不足が叫ばれている現代において、労働の多様化が進むことは間違いないといえるでしょう。子育てや介護といった理由で離職していた女性や経験豊かな高齢者も積極的に雇うことを視野に入れている企業も多いのではないでしょうか。前項で指摘した通り、新卒一括採用で入社した社員と異なる賃金制度を導入する企業もありますが、多様な働き方を受け入れ、正当な報酬制度を確立するためには、従来の職能給ではなく、職務給の導入が推奨されています。

職能型とは「従業員の能力は仕事を通じて向上していく」という考え方の元、評価を勤続年数に応じて区分し、賃金が決定される方法です。OJTを通じてのみ労働者の能力が培われ、勤続年数が長いほど賃金が上昇していきます。しかし、転職者や勤続年数が短い者にとっては能力が過小評価されてしまっている恐れがあり、不公平感やモチベーションの低下の原因にもなります。

一方で、職務給とはいわゆる成果主義・同一労働同一賃金の賃金制度です。西欧では広く利用されている制度で、職務記述書(ジョブディスクリプション)に書かれている内容を元に各労働者が従事する仕事内容と仕事の成果をもとに給与が決定します。社員それぞれの能力や仕事内容を適正に評価し対価を支払う、同一労働同一賃金が達成しやすい賃金制度として近年注目されています。

職能給から職務給・役割等級制度へ

さて、そもそも多くの日系企業がとっていた職能給や最近注目されている職務給はどのような社会的・経済的な背景で生まれたものなのでしょうか。新卒一括採用・終身雇用という雇用形態が慣例化していた日本企業では、年功序列型賃金が長らく採用されてきました。高度経済成長期を終えて安定成長期に入った後もその傾向は続き、職能資格制度と呼ばれる賃金制度が主流になりました。しかしバブル崩壊後、企業の成長が鈍化して人件費も削減せざるを得ない状況下では、賃金の引き下げが難しい・優秀な若手を抜擢しにくいといった職能給特有の欠点が目立つようになりました。この時期、企業はグローバル化や国際競争の激化も相まって、業務・成果主義型の賃金制度への移行が試みられました。ただ、長らく職能型が一般的だった日系企業の中には職能型から職務型への転換を難しいと感じる企業も多く、2000年代後半には成果主義へ移行する企業の割合は減少しました。

(参考:厚生労働省平成23年版 労働経済の分析

 

しかし近年は、少子高齢化による労働力不足を賄うため、非労働力人材の活用や正規雇用と非正規雇用の格差是正が進み、働き方の多様化が進んでいます。日本でガラパゴス化していた職能給に代わる新たな制度が再び注目されるようになりました。仕事内容を元に給料を決定する職務給をもとにした職務等級制度です。また、職能型と職務型の賃金体系をうまく融合した「役割等級制度」と呼ばれる新たな賃金制度を管理職向けに利用する企業も増加しています。役割等級制度では企業がその役職に対して求める能力・成果を軸に評価する制度です。近年、日系大手のソニーやパナソニック、キャノンなども年功序列型を廃止し、職務型への移行を進めているように、次第に職務型の賃金制度や役割等級制度が主流になっていくことでしょう。

職務給のメリット・デメリット

【メリット】
何よりもまず、多様な人材を必要なポストへ配置しやすくなるというメリットがあげられます。勤続年数や性別に応じない賃金体制なのでスキルを持った中途採用者や転職者、能力のある若者を積極的に登用しやすくなります。年齢や肩書に左右されることなく各従業員が高いモチベーションで能力を発揮することが出来るため、専門職やスペシャリストが養成しやすい環境になります。事業規模の変化に伴う不要な職務や各個人に対し右肩上がりの人件費を維持する必要がないため、仕事内容や成果に対して高すぎる報酬を支払う状況を減らすことが出来ます。さらに、評価のために仕事内容が明確化されるため、仕事量に対する対価が公平・公正な報酬制度になります。近年問題となっている過労やオーバーワークを防ぐことも期待できます。

【デメリット】
これまで職能型賃金がある程度長期勤続へのモチベーションになっていたことは間違いないため、相対的に平均勤続年数が下がる可能性があります。また、これまでの賃金体制を変更するには社内の役員や従業員の同意を得る必要があり、給与が減るリスクが高まる制度であるため反対されたり軋轢が生じたりする可能性も考えられます。

職務給への転換の仕方

ここでは中途採用者が特に多い中小企業を対象に職務給の導入方法を紹介していきます。まず職務給を導入するにあたって、役割等級を設定し、役割評価基準を決定する必要があります。役割とは職種と等級という二つの要素から構成され、具体的にそのポストで何をしているか・職種内のどの立ち位置にいるかで決定されます。役割評価は要素別点数法と呼ばれる方法がおすすめです。具体的に仕事内容を分類し、点数で評価していきます。数値化した評価基準を用いることで給与へ転換しやすくすることが可能です。

次に新たな賃金制度を導入するために基本給体系の選定が必要です。急に完全な成果主義は難しいことも多いので、職能給や年功給と組み合わせて社員が納得しやすい賃金体制を作ることが重要になります。勤続年数を経て職務遂行能力が習熟したことを反映することも、早期退職を防ぐ効果があるので時には有効であるといえます。特定の職種が評価されやすくなっていないか、給与の原資の確保が出来るかなどの検討も必要になります。場合によっては段階的に移行措置をとったり、昇格基準の浸透や職種転換基準の設置などの施策を用意しましょう。

(参考:厚生労働省 平成23年度『中小企業のモデル賃金』

 

 まとめ

今回は働き方の多様化に伴う賃金制度の変化を基に、転職者を受け入れやすい評価制度のご紹介をしていきました。職務給は単に労働者の能力・成果のみを図る方法、ととらえるのではなく、全従業員の仕事に対する対価として納得感を持たせることのできる方法としてうまく活用していきたいものですね。すぐには企業全体の賃金体制を変えることは難しくても、既存の制度とうまく組み合わせたり、必要な人材確保のために中途採用者ごとに報酬を決める方法もあります。この記事が求人広告の給与条件や社内評価制度の見直しの参考になれば幸いです。

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