HR tech:人事もアジャイル化する時代

「アジャイル人事(俊敏性のある人事)」

このワードをご存知の方がどれぐらいいらっしゃるでしょうか。アジャイルとは俊敏さを示すワードであり、元々はテクノロジーの分野に特化した手法を示します。アジャイルの手法は最近ではテクノロジー分野に限らず、製品開発やマーケティング、そして人事の分野にまで浸透してきているのです。とは言うものの、人事の分野においてアジャイル手法の全てを取り入れているのではなく、一般原則(俊敏性の向上・走りながらの軌道修正・業績改善・反復による学習など)のみの応用に限られています。アジャイル人事は業績管理の領域から浸透し始め、他の人事業務にも変化を及ぼしています。HR tech、IoTの隆盛する現在、新しい人事のカタチであるアジャイル人事について、今回は見ていきましょう。

目次

 

 

今までの業績管理

 まずはアジャイル人事が何故必要か、考えてみましょう。第二次世界大戦後、製造業こそが産業界の中心を担っており、人事業務はトップダウン型のプランニング(計画)が主流でした。プランニングの特徴として①個人レベルに対する評価②評価する時間軸が長い、という2点が挙げられます。具体的には企業が元兵士を雇い、能力向上を促進すべく様々な部署を経験させ、長い年月をかけて育成し、徐々に責任を重くし、昇格の度に昇給する・・・。すなわち、ルールに則って一貫性のある人事制度を設けているのです。大戦後の業績管理には「官僚的」思想が根底にあることが覗えます。

 やがて1990年代になると事業の先行きの見通しが困難になり、新たなスキルの習得が急務でしたが、従来のプランニングによる人事業務は破綻してはいませんでした。戦後の社内での「育成→昇進」という流れは外部からの中途採用に取って変わっていきました。プランニングは景気や事業状況の変化に応じて意味がなくなることは明らかです。そういった認識はされつつも、廃止されませんでした。このように歴史を振り返って分かるように、人事業務の根本的な考え方は戦後から変化しませんでした

そこで、人事にもアジャイル化

しかし現在では、より本格的な変化が起きています。現在大多数の企業にとって、生き抜く上で急速的なイノベーションが必要不可欠になっています。したがって、これまでのトップダウン型のプランニング手法に代わって、その時点での状況に適したユーザー志向の機敏な手法が普及しているのです。

では、どの領域で変化が起きているか?

では人事分野で見ていきましょう。人事分野は組織のあらゆる側面に関わり、また全ての従業員に関わるものです。したがって、人事分野でのアジャイル化は、先述の職能分野よりも圧倒的に広範囲になり、困難になると言えます。ここからは人事慣行の見直しが行われている、

以上6つの分野について見ていきます。

①業績査定

これまでは年次業績レビューが主流でしたが、年次業績レビューは急速なイノベーションを求める企業にとって、意にそぐわないものです。急速なイノベーションを求める一方で、プロジェクトの進行方法や終了時期を一年以上も前に計画していたのでは矛盾しています。したがって多くの場合は年次業績レビューが真っ先に不要とされました。さらに、事業領域や事業ユニットの目標を基にした個人目標が毎年上から降ってくることもなくなりました。

 しかし年次業績レビューを廃止しただけで代替策を講じず、従業員へのフィードバックを怠っていては意味がありません。多くの組織はこの事実に気づかず、失敗を招いてしまっていたのです。ところがGEとIBMは業績査定を頻繁に行うことで失敗を成功に変えていきました。GEとIBMは年間を通して速やかにフィードバックを行い、主なアジャイル原則の実践をチームに促すことに重点を置きました

 (ジョンソン・エンド・ジョンソンの一例)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは同僚や上司とリアルタイムで意見交換ができるカスタマイズアプリを用いることで、従来とは異なる継続的なフィードバックプロセスとする実験を行いました。しかしマネジャーの多くが実験に参加しないという結果に終わりました。これを受け、会社はマネジャーに対し、「優れたフィードバックとは」という研修を行い、チーム内で模範的な行動を取る者を「変革の推進者」としました。その結果、フィードバックの質の飛躍的な向上に繋がりました。

 (リジェネロン・ファーマシューティカルズの一例)

 リジェネロン・ファーマシューティカルズ(REGN)は急成長中のバイオテクノロジー企業です。バイオテクノロジー企業内部の部門は様々であり、医薬品開発部門、セールス部門、製品供給グループなど多岐に渡るため、同じ周期で同じように査定を行うのはふさわしくないという背景を持っています。そこでREGNは多様な部門のニーズに合わせて4つの査定制度を設けました。これは4制度それぞれに対応しなければならないため面倒さは否めませんが、継続的なフィードバックの徹底には効果的と言えます。

②コーチング

 アジャイル人事手法の導入に成功している企業に欠かせないのが、マネジャーのコーチング技能向上です。従業員の能力を高め、スーパーバイザーとの関係を充実させることで、会社全体のイノベーションや俊敏性に繋がるという狙いがあります。

 コーチング技能向上に取り組む企業は多く、またその方法も様々です。具体的な取り組みとしては、スーパーバイザーが多忙なマネジャー向けのコーチング研修を受け、なおかつ同僚間のフィードバックを行う、コーチングのプロに常駐してもらう、業績レビューのプロセスを簡略化して評価を能力育成の議論から切り離し、人材評価会議を廃止する、などが挙げられます。人材評価会議はスーパーバイザー間の恣意的な駆け引きの場とも言い換えることができ、コーチング力向上を阻むものです。人材評価会議を廃止することで、従業員の成長のための潤沢な時間を確保できます。

③チーム

 従来の人事では目標・業績・ニーズなどにおいて個人ベースで重点が置かれていました。しかし現在では多くの企業がプロジェクト単位で業務を行っているため、チームベースで重点を置く必要があります。チームベースでのマネジメントを行う場合、⑴多角的なフィードバック⑵現場での判断権限⑶複雑なチーム力学の3点に取り組む術を身に着ける必要があります。

1. 多角的なフィードバック

アジャイル環境において各人の貢献を深く知るのは同じチームのメンバーであるため、同僚によるフィードバックは必要不可欠です。同僚からのフィードバックは基本的に本人に向けて発されるため、建設的な意見が出されます。また、同僚に対してだけでなく、部下がチームリーダーやスーパーバイザーに対して行う上方のフィードバックも、アジャイル組織では非常に尊重されます。部下から率直な意見をもらう上で最も重要なのは、上司が部下に対して意見を望み、尊重するという趣旨を明言することです。明言を怠ると部下はフィードバックの意欲を失い、上司に対して不信感を抱きかねません。上司が部下に対して、フィードバックを求める姿勢を行動で示すことが重要です。

 フィードバックが活発に行われると、次は膨大な量のフィードバックの管理が必要になります。多くの企業がテクノロジーを用いてフィードバックを管理しています。アプリを用いることで、上司・同僚・顧客が時間や場所を問わずフィードバックを可能にする企業もあります。活発なフィードバックをテクノロジーを用いて管理することで、折角生まれたフィードバックをより効率的に扱えるようになるのです。

2. 現場での判断権限

マネジメントが個人ベースからチームベースへ変化することで、自主的に業務遂行権を従業員に与える動きが生じています。これは大きな行動変化であるため、上手く対応するためには支援が必要です。例えば、従業員が自主的に業務の方向性を決定できるような土壌の構築などが挙げられます。

3. 複雑なチーム力学

スーパーバイザーの役割が、生産性の高い健全なチーム力学の促進へと変化したことにより、スーパーバイザーの役割内容が格段に複雑になりました。したがって成果が劣るチームに対して、成果の優れたチームの運営手法を見せるなどの手助けが必要です。

④報酬

 アジャイル人事による変化は給与にも及んでいます。小売企業では従来の年度末の昇給のみへの依存を止め、従業員の貢献にその都度臨時ボーナスを支給するというやり方でアジャイル環境に適応しています。従来の給与方式では成果と報酬のタイムラグが大きく、従業員のモチベーションに効果が限られていましたが、すぐに報奨を与えることで速やかなフィードバックの効果が著しく高まります

 また、報奨制度は学習や知識共有のようなアジャイル理念の徹底にも繋がります。ボーナス制度の場合、建設的なフィードバックが妨げられることがあります。ボーナス額が評価によって変動するため、悪い評価を与えにくくなってしまうのです。公平な処遇と協働を促すためにも、報奨制度の見直しが有効です。

⑤人材の募集と採用

 世界的な金融不況が終息し、景気改善によって人材の募集と採用が差し迫った課題となり、アジャイル化が進んでいます。募集の点では、アジャイル環境に適した採用候補者の発掘や勧誘といった活動を、テクノロジーを用いて行っています。また採用においては、GEが新たに設けたデジタル事業部など、職能横断的なチームがすべての採用案件に一体となって取り組むことで課題を解決しています。デジタル事業部では空きポストに優先順位をつけ、優先順位の高いポストが埋まるまで注力し、複数の採用案件を同時並行で進めます。その結果、効率的かつ重要度の高いポストには確実に適切な人材を配置することで人材採用の課題を解決しています。

⑥学習と能力開発

 新しいスキルをより迅速に組織に取り入れるために、学習・能力開発の分野でも変革が必要とされました。多くの企業で取り入れられている従業員向けオンデマンド学習コースは、明確なニーズを持つ人材にとっては有益ですが、明確なニーズを持たない人材には有益とは言えません。そこで最近では、データ分析に基づいて具体的な職務や昇進に必要なスキルを特定し、当人の経験や興味関心を踏まえどういった研修や職種が適しているかを各人に提示する企業もあります。

 また、皆さんは要職を担うべき人材に何年も前に目星をつけて、必要な時期までの特定の能力を伸ばすよう期待する、と計画した経験があるでしょうか。この計画の欠点は、大抵計画通りに事が運ばないということです。後継者候補を選出する時間軸を短縮することで解決でき、アジャイル環境に適応した後継者育成が可能になるでしょう。

これからの人事制度を考える

事業内容の変化が激しい、という現在の企業の業務遂行の在り方を考慮すると、従来の人事制度の変革が必要があることは明らかです。しかしアジャイル人事には内部からの反発を受ける可能性は避けられず、さらに従来では必要のなかった新しいスキルを身に着ける必要性もあります。それでも、企業が生き残っていくために、存続していくために、企業で働く「人」のために、人事制度の変革は必要不可欠なのではないでしょうか。

HRのトレンドを抑えるために

アジャイル人事に限らず、HR界では様々な変化が起こっています。
人事担当者にとって、より良い人事を目指すためには、刻一刻と変わるトレンドを抑えることが急務と言えるでしょう。

しかし、一口に「採用トレンド」といっても、新しい採用が蔓延る中、本質的な採用トレンドを見極めるのは至難の技ではないでしょうか。

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Written by 採用GO 編集部 藤原

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