人事なら知っておくべき法律シリーズ⑦〜障害者雇用促進法とは~

昨今では、障害者雇用の水増し問題が話題になっています。採用担当の人事の方なら、障害者雇用について考えたことのある方も多いのではないでしょうか?しかし、企業の法定雇用率や納付金制度の仕組みなど、少々複雑な内容となっています。そこで、今回は障害者雇用促進法の概要を、新たに改正された点や守れなかった場合の罰則なども踏まえてわかりやすくまとめてみました。

 目次

 

 障害者雇用促進法の目的

 

障害者雇用促進法の最大の目的は、障害者の職業の安定を図ることです。そのために、障害者雇用促進法では、

 

  1. 障害者の雇用義務などによって雇用を促進するための措置
  2. 雇用の際に障害者と障害者でない者との均等な機会・待遇の確保のための措置
  3. 障害者が持っている能力を有効に発揮することができるようにするための措置
  4. 職業リハビリテーションにより職業生活において自立するすることを促進するための措置

これらを総合的に行い、障害者が働きやすい社会の実現を目指しています。

 

法律の対象となる障害者とは

障害者雇用促進法のいう「障害者」とは、身体障害知的障害精神障害発達障害を含む)、また、その他の心身の機能の障害があるため長期にわたって職業生活に相当の制限を受けたり、職業生活が困難な者のことを言います。

企業側の責務

 

障害者雇用促進法では、障がいのある人でも安定して職業につき、自立して働くことができるように企業側の責務を定めています。障害者を雇用する人事の立場として知っておかなくてはならない、主な5つの責務についてまとめてみました。

 

1. 障害者差別の禁止

事業主は労働者の募集や採用において、障害者と障害者でないものとの均等な機会の確保の妨げとなっている事柄を改善する必要があります。そのため、事業主に対して過重な負担とならない限り、当該障害者の障害に配慮した必要な措置を取らなければなりません。

具体的な差別の事例としては、

・身体障害、知的障害、精神障害、車椅子の利用、人工呼吸器の使用などを理由として採用を拒否すること

・障害者であることを理由として賃金を引き下げたり、昇級をさせなかったりすること

・食堂や休憩室の利用を制限したりすること

などが挙げられます。当たり前のことではありますが、このような不当な差別的扱いを行うことは禁止されています。

 

2. 合理的配慮の提供

事業主は、障害者である労働者の能力が有効に発揮できるようにし、職務が円滑に行われるようにするために、その雇用する労働者の障害の特性に配慮した施設の整備や援助を行う者の配置をするが必要があります。

具体的には、

・募集・採用の際に問題用紙を点訳・音訳すること

・口頭で説明するだけでなくわかりやすい文書や絵・図を用いて説明すること

・業務指導・相談や雇用主との間の調整を担当する職員を置くこと

などが挙げられます。これらの措置を取る際には、障害のある労働者の意向を十分に尊重しなければなりません。

 

3. 障害者の雇用義務

全ての事業主は進んで対象となる障害者の雇用を行う義務があり、「常時雇用している労働者数」の一定の割合(法定雇用率)に相当する人数以上の障害者を雇用しなければなりません。法定雇用率は5年ごとに算定し見直すこととなっています。平成30年度現在の民間企業(対象労働者数45.5人以上の規模)の法定雇用率は2.2%と定められています。また、単に障害の持つ人を1人として数えるのではなく、障害の大きさや労働時間によってカウント方法が異なります。現行の算定方法では、

・原則として、週30時間以上の常用労働者(1年を越えて雇用が見込まれる者)が算定の対象

・重度身体障害者、重度知的障害者については、1名を2名として計算できる。(ダブルカウント制)

・短時間労働者の重度身体障害者、重度知的障害者は、1名として計算される。

・短時間労働者の精神障害者については、平成30年4月から特例措置が設けられ、要件を満たす場合は、1名として計算される。要件を満たさない場合は、1名を0.5名と計算

となっています。

法定雇用率を求める式は以下の等式です。

法定雇用率

(出典:FVP 障がい者雇用用語集「障害者雇用率制度とは )

 

4. 報告等

雇用する労働者の数が45.5人以上である事業主は、

 

  • 毎年6月1日までの対象障害者である労働者の雇用に関する状況を、その翌月の7月15日までに厚生労働大臣に報告
  • 障害者雇用推進者を選任

するように努めなければなりません。また、障害者である労働者を5人以上雇用する事業者は、障害者職業生活相談員を選任し、障害者である労働者に職業指導をする必要があります。さらに、障害者である労働者を解雇する場合は、速やかに公安職業安定所長に届け出なければいけません。

障害者雇用の状況に関する報告は、ネット上からもすることが可能です。手続きについては電子政府の総合窓口 e-Govをご確認ください。

 

 

5. 苦情処理・紛争解決援助

事業主は、障害のある労働者から苦情の申し出を受けた時は、苦情処理機関にその対処を委ねるなどして、自主的な解決を図るように努める必要があります。また、障害のある労働者と事業主の間で紛争が起こった場合、紛争を理由にしたり、障害のある労働者が他者に援助を求めたことなどを理由にしたりして、この労働者を解雇・その他の不利益な扱いをすることは禁止されています。

 

改正されたポイント

平成25年に改正された法律は、公布日に施行されたものと平成28年に施行されたもの、平成30年に施行されたものの3種類があります。施行日の早い順に並べると以下のようになります。

 

  1. 障害者の範囲明確化(平成25年6月19日公布日施行)
  2. 障害者の権利に関する条約の批准に向けた対応(平成28年4月1日施行)
  3. 法定雇用率の算定基礎見直し(平成30年4月1日施行)

一つひとつ順番に確認していきましょう。

 

1. 障害者の範囲明確化

障害者雇用促進法に置ける障害者の定義はすでに紹介しましたが、改正前は身体障害と知的障害、精神障害を総称して「障害」と呼んでいました。しかし、改正によって「精神障害」に「発達障害を含む」と明記されたこと、また、「その他の心身機能の障害」も追加されたことがポイントです。

 

2. 障害者の権利に関する条約の批准に向けた対応

「障害者の権利に関する条約」とは、国際連合が平成18年に採択した条約のことです。日本は翌19年に署名し、その後、日本は条約の批准に向けて障害者基本法の改正など国内法の整備を進めています。障害者雇用促進法の改正も、国内法整備の一環として行われたものです。これにより、事業主は雇用の分野における障害者に対する差別の禁止や、合理的配慮の提供義務を負うことになりました。これについては先ほども触れましたが、以下の図で今一度ご確認ください。

 

 (出典:厚生労働省 「障害者の雇用促進等に関する法律の一部を改正する法律の概要」)

 

 

3. 法定雇用率の算定基礎見直し

法定雇用率の算出方法については、企業側の責務(障害者の雇用義務)で触れましたが、具体的には、上記にも示したの式の太字で下線部の部分精神障害者)が新たに算定基礎として追加されました。 

 

(出典:厚生労働省 「障害者の雇用促進等に関する法律の一部を改正する法律の概要」 )
 

また、改正により法定雇用率は0.2%引き上げられ、2.2%となりました。そして、改正前は対象となる民間企業の範囲が、常用労働者が「50人以上」だったのに対し、改正後は45.5人以上」と引き上げられたので、中小企業は注意が必要です。

  

障害者雇用納付金制度

障害者雇用納付金とは、法定雇用率を下回った場合に徴収されるものです。この徴収された納付金を元に、法定雇用率を上回った企業に対して調整金や報奨金が支払われます。

障害者を雇用するためには、作業施設や作業設備の改善、職場環境の整備、特別の雇用管理等が必要となります。健常者の雇用に比べて一定の経済的負担を伴うことから、障害者を多く雇用している事業主の経済的負担を軽減し、事業主間の負担の公平を図りつつ、障害者雇用の水準を高めることを目的として 「障害者雇用納付金制度」が設けられています。

 

・対象となる企業

障害者雇用納付金制度の対象となる企業は、原則、年度内で常時雇用労働者数が100人を超える月が5ヶ月以上ある企業です。この規模の企業は、法定雇用率を達成しているかどうかに関わらず、障害者雇用納付金の申告を行う義務があります。提出先は主たる事業所の所在地を管轄する独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の各都道府県申告申請窓口となります。なお、平成27年3月までは、この納付金の対象となっていたのは、常用労働者200人超でした。対象となる企業は年々変わりますので、総務・人事担当者は注意が必要です。

 

・障害者雇用納付金の額

法定雇用率を下回った場合、1人当たり月額50,000円を申告と同時に納付します。なお、年度内で常時雇用する労働者数が8カ月以上100人を超え200人以下の事業主は、2020年3月31日までは、納付金の額が1人当たり月額50,000円から40,000円に減額されます。

 

・障害者雇用調整金・報奨金

障害者雇用調整金とは、法定雇用率を上回った場合に申請に基づき支給されるもので、1人当たり月額27,000円が支給されます。また、100人以下の企業は申告義務はありませんが、一定の数を超えて障害者を雇用している場合は申告により、1人当たり月額21,000円が報奨金として支給されます(申告時期は4/1~7/31まで)。障害者雇用納付金が、法定雇用率を未達成の場合に支払わなければならないものであるのに対し、調整金や報奨金は達成した場合や一定数の雇用がある場合に受け取ることができるものとなっています。

 

 

障害者雇用促進法における罰則

 障害者雇用促進法では以下のような罰則を設け、法令遵守を図っています。

 

1. 事業主の報告義務違反の場合

事業主が障害者雇用促進法で定めた報告義務を果たさず、報告しなかった、あるいは虚偽の報告をした場合は30万円以下の罰金が科せられます(第86条)。

 

2.  法定雇用率未達成の場合

法定雇用率が未達成の事業主には、ハローワークにより、障害者の雇入れに関する計画書の提出命令、計画の実施状況が悪い場合は適正実施の勧告、また、特別指導が行われることもあります。特別指導は、雇用状況の改善が著しく遅れている事業所に対し、企業名の公表を前提として行われます。さらに、正当な理由がないにもかかわらず、勧告に従わない場合には、厚生労働大臣は企業名を公表することができます。平成28年度には、実際に2社が社名を公表されています。企業名の公表は企業の信用を低下させるので、絶対に避けたいものです。

まとめ

 いかがでしょうか?少々複雑な障害者雇用促進法ですが、企業側の責務や納付金制度、など、絶対に知っておきたい点をまとめてみました。改正により、労働者数が45.5人以上であれば、障害者の雇用義務が生じることになります。また、法定雇用率を下回り続けると納付金を支払い続けなければならないため、もし資金的な理由で下回ってしまうのならば、助成金の活用を検討してみると良いでしょう。人事担当者として改正点をしっかり把握し、法令を遵守して、障害のある人もない人も共に働きやすい企業づくりに取り組みましょう。

 

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Written by 採用GO 編集部 渡辺

採用GOを運営する最先端のHR企業 HR Forceとは?

 

 

 

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