急増中の早期退職制度の背景に見る、人生100年時代の人事戦略とは

東京商工リサーチは2019年に希望・早期退職制度を募集した上場企業が例年を大幅に上回っていると発表しました。単なる業績不振によるリストラにとどまらない、中長期的に企業が成長するための人事戦略を見据えて希望・早期退職制度を導入する企業が増えています。これからの人事戦略には何が必要なのか?50歳以上のミドルシニアを活用するためにはどうすればいいのか?徹底解説していきます。

目次

 

  • 今増加している希望・早期退職制度
  • 社会的背景
  • 新時代を生き抜く企業の人事戦略
  • ミドルシニア社員活用方法

 

 

今増加している希望・早期退職制度

東京商工リサーチは10月に、2019年に入ってから希望・早期退職者を募集した上場企業の数は27社に上ると発表しました。対象人数は1万人を優に超えています。2018年の1年間で12社だったのにも関わらず、2倍以上の伸びになっています。27社のうち約7割の企業は業績不振が原因であると東京商工リサーチは指摘します。つまり、業績が良い企業でも時代を見据えた人事戦略の元で、早期退職制度を導入し始めているということです。

 

早期退職

 

出典:東京商工サーチ「2019年 上場企業『希望・早期退職』実施状況」

早期退職制度は各社によって様々ですが、共通して40・50代以降のミドルシニアが対象になっています。

 

社会的背景

ではなぜ、早期退職制度の導入が進んだのでしょうか?原因として大きく二つの社会的な背景があります。

①産業構造の転換

これまで日本経済を牽引してきた電気機器や製造業の業績不振により、人件費の削減が進んでいることが挙げられます。東芝や富士通は1000人以上の早期退職を計画しています。また、技術の代替により人員削減が進んでいる金融業界や、eコマースとの競合が激化している小売業界やアパレル業界等も人員削減が進んでいるようです。

②企業内人材の新陳代謝の促進

トヨタの社長である豊田章男氏は、2019年5月に日本の終身雇用について「守っていくのが難しい局面に入ってきたと思う」と言及しています。企業として、従業員の雇用を守る方向に働いた結果、これまで大量に新卒採用をしてきたメガバン3社は軒並み新卒採用の人数を削減する方策をとっています。

しかし、それだけでは世代間のバランスが悪くなる・組織の新陳代謝が進まない、といった課題が生じてしまいます。そこで企業として気になってしまうのが年功賃金により給与が高いミドルシニア層。業績の向上や新規事業を運用するにあたって活用できなさそうな人材から早期退職を促したい、と導入されるのです。つまり豊田氏の言うところの「終身雇用が難しくなっている局面が早期退職制度に現れていることがわかります。

出典:日本経済新聞「自工会の豊田会長、日本の終身雇用『守っていくのが難しい局面』」

 

③人生100年時代

2013年に改正された高齢者雇用安定法により、65歳までは希望する社員全員に就業機会の提供が義務付けられています。そしてさらに2019年12月には、政府は70歳まで就業機会を与えるよう促す方針が発表されています。企業としては、成果を出さない人材を70歳まで雇う余裕はないため、早めにキャリアを再考してもらいたいという考えの元、早期退職制度に踏み切ります。

出典:日本経済新聞「『生涯現役』政策で後押し 全世代型社会保障」

 

これからの企業の人事戦略

では、ミドルシニアの首を切れば企業の新陳代謝が促進され、企業も成長できるのかというとそう簡単な話ではありません。若い世代も含めて、人事戦略を再考していく必要があります。

①賃金形態の見直し

職能給から職務給への転換が進んでいることをご存知ですか?ミドルシニア層を雇い続けることが難しい理由の1つに「賃金が(成果に比べて)高い」という理由があります。新卒採用の相場が変化していく中、高いスキルを持つ人材に高い賃金を、つまり職務給への転換が必要になっていきます。

詳しくはこちらの記事を参照ください。

 

②新しい組織作り

これまで、「上司の方が年上で勤続年数が長い」「降格はめったにしない」という組織形態を持っていた企業も多いのではないでしょうか。そのような状況では、企業の新陳代謝は生まれにくいでしょう。年齢や勤続年数を気にするだけではなく、職務遂行能力も評価した上で転職者や再雇用された60歳以上の社員を活用する必要があります。その時に、全社員に共通する課題として、チーム内の円滑なコミュニケーション能力が必要になります。多様な組織体制に適応できるような心掛けを促したり、ミツカリ等の新しい人事管理ツールを活用して従業員の性格や適性を元に人材配置を行ったりすることが大切です。

 

ミドルシニア社員の活用方法

①モチベーションの維持

40,50代になってくると、昇進の天井が見えてしまい、日々の業務へのモチベーションを維持することが難しくなってきます。そういった社員に対しては成果給の導入や早期退職制度は危機感を持たざるを得ないことから、モチベーションの向上には有用です。ただ、荒療治であることと、いきなり今までのやり方を否定しては組織内に不満がたまってしまいます。キャリアカウンセリングを導入して対応していきましょう。どのような目標意識を持って仕事に取り組むべきか、どうやったら意欲を持ち続けて働くことが出来るのかについて社員とキャリアカウンセラーが話し合う機会を設けていくことが大切です。

 

②50歳以降のキャリアプランの形成

職業人生が長期化する中で、50代から新たにキャリアプランを考えてもらう必要があります。円滑に早期退職制度を運用している企業では、まずキャリアについて再考してもらい、専門性を身につけるか、企業内の異動に応じるか等の段階を踏んでいます。いきなりリストラ勧告を受けるよりも、早期退職前に個人への説明と選択をしてもらうステップを踏んでいます。

70歳まで働くことを見据えて、新しいことに取り組んでもらわないと雇用の維持が難しい場合も出てきています。例えば、SOMPOグループは介護職やITセキュリティ部門への異動を決定しています。ここで留意する点は、これまでキャリアについて考えてこなかった40~50代がいきなり越境学習やキャリア転換に適応することは難しいということです。多少のコストがかかったとしても、汎用性の高いスキルを身につけてもらったり従業員の主体的なキャリア形成を促したりする必要があります。

例えば、AIのデータ識別やIT技術とこれまでのノウハウをつなぐ人材へと成長してもらう等、機械化によって新たな仕事も社内には生まれているはずです。今まで以上にタスクの整理と人材の管理が重要になってきます。

 

まとめ

いかがでしたか?職業人生の長期化と産業構造の転換が進む中、人事に求められていることは

  • 従業員の主体的なキャリア形成を後押し
  • 成果と賃金を紐づける
  • 機械の導入や若手の活躍に合わせたミドルシニアの活用方法を提示する

の3点です。生産性の高い組織にするために、人事の役割はますます重要になってくるといえるでしょう。

 

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Written by 採用GO編集部 亀川

 

 

 

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