
近年、特に若者の間で退職代行サービスの利用が増加しています。しかし、企業側からすれば「仕事を辞めるのに第三者を利用するのは非常識だ」と考える方も少なくないでしょう。そもそも退職代行とはどういったサービスで、なぜ退職代行利用者が増えているのでしょうか。今回の記事では、人事担当者様に向け、退職代行について分かりやすく解説すると共に、気になる違法性や対応策についてご紹介します。
目次
退職代行サービスとは
そもそも退職代行とは、第三者が退職希望者に代わって企業に退職の意思を伝え、退職を実現させることを指します。この「第三者」をビジネス化したものが退職代行サービスです。
退職したいのに辞めさせてくれない、退職の旨を伝える際に脅しや嫌がらせを受ける等、会社をスムーズに辞めることができない場合に退職代行を頼むケースが一般的です。その際退職代行サービス業者は、依頼者に代わり企業に直接電話等で退職意思を伝え、退職後の手続きを行うこともあります。
退職希望者は、専門業者に退職手続きを委託することで、企業とコミュニケーションを取らずに退職やその後の補償等の交渉を容易に行うことができます。しかし企業側としては、依頼者との対話の余地もなく粛々と第三者に退職意思を伝えられるため、退職代行に良い印象を持たないケースも多いでしょう。
なぜ退職代行サービスが普及しているのか
退職代行サービスは近年急激に利用者が増加しています。
「なぜ退職意思を伝えるだけのことにお金を使うのか分からない」
「仕事を辞めるのに第三者を利用するのは非常識だ」
こういった意見がある一方で、ここまで利用者が増える要因は何でしょうか。以下の2点が挙げられます。
1. 自力で会社を辞められない組織環境
前述の通り、退職代行サービスは会社をスムーズに辞められない場合に利用されます。
- 退職届を上司が受け取ってくれない
- 退職意思を伝えたら損害賠償を求められた
- 辞めたいと相談してから嫌がらせを受けるようになった
こういった企業側のハラスメントやコンプライアンスにか関わる問題の場合、自力で解決できないため、第三者に協力を仰ぐことも少なくありません。
その背景には、転職ブームの影響があります。企業から転職により人材が失われていく中で、「何とか採用や育成にお金をかけた人材に残ってほしい」という気持ちが、思わぬ行動を招き、退職希望者が退職代行に頼らざるを得ない組織環境を醸成しているかもしれません。
2. 転職ブームに合わせ、若者の退職に対する価値観の変化
転職ブームは企業の組織環境だけでなく、若者の退職に対する価値観にも変化を及ぼしています。
転職を当たり前に考えている若者の場合、退職時のやりとりを億劫に感じることも少なくありません。仮に引き留められたとしても、辞める会社との交渉に労力を割くより、転職先でのキャリアプランを考える方が合理的だと考え、退職代行サービスに委託するのです。
実際、インターネットで退職方法について検索すると、上位に退職代行サービスの広告が流れてきます。退職に手軽さを求める若者にとって、今後退職代行サービスは益々合理的な手段として常用されるでしょう。
退職代行サービス例:EXIT
退職代行は違法?
退職代行は比較的新しいサービスであり、法的な解釈は確立されていませんが、退職代行の違法性は非常に線引きが難しいものとなっています。
そもそも弁護士以外の人間が報酬を得て代理人として交渉することは違法とされています。
しかし退職代行業者は、「あくまで「交渉」ではなく、退職の意思等を本人に代わって「伝達」する行為としているため、違法にはならない」と主張しています。
これに対し、退職意思を会社に伝えること自体が、雇用契約を終了させる権利や義務に関わるため、違法であるとの指摘もありますが、退職届の提出が正式な退職の意思表示であり、最終的に退職届を本人が作成・郵送していれば適法である、との見方が概ね一般的と言えるでしょう。
また、退職代行サービスが労働組合である場合や、弁護士が退職代行を行う場合は「交渉」も適法となります。
労働組合運営の退職代行サービス:SARABA
退職代行に対し人事が取るべき対応策
では、人事担当者は退職代行サービスに対しどのように対応すべきなのでしょうか。3つポイントをご紹介します。
1. 退職代行サービスを利用されない組織づくり
本来、会社と退職志願者が直接話し合い、双方が納得の上で退職を受理することが理想です。退職志願者が何かしらの理由で退職の相談を会社に直接行いたくない、乃至は円滑に進まないために退職代行が利用されるため、会社と社員の信頼関係が必要です。退職代行という最終手段を使う前に、まずは会社が相談に乗るという姿勢や仕組みづくりが重要と言えるでしょう。
2. 退職代行サービス業者の適法性をチェック
もし、突然退職代行業者からの委託があった場合、適法性をチェックしましょう。前述にある通り、退職代行サービスは適法との解釈が一般的ですが、中には弁護士がいないにも関わらず「交渉」を行なっていたり、行き過ぎた違法性の高い業者も存在します。違法業者とのやりとりはトラブルに巻き込まれ得るため避けた方が良いでしょう。
しかし、たとえ退職代行サービスが違法であったとしても、本人に退職意思があることには変わりないため、重圧的な対処ではなく、本人に寄り添った対応が必要です。
3. もし退職代行サービスを利用されたら拒絶しない
人事の中には退職代行を嫌い、退職代行サービスからの電話を着信拒否にしたり、対応しない方も少なくありません。しかし、退職代行サービスを拒絶してしまうと、更なるトラブルが発生することもあります。退職志願者本人とも、代行サービスとも連絡が取れなければ退職関連の書類や貸与物の返却が滞り、会社に不利益が被る可能性もあります。更には会社の悪い噂やイメージダウンにも繋がりかねないため、冷静に受け入れることが先決と言えるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回の記事のポイントをおさらいします。
- 退職代行とは、第三者が退職希望者に代わって企業に退職の意思を伝え、退職を実現させること
- 会社をスムーズに辞めることができない場合に退職代行を頼むケースが一般的である
- 人事は退職サービスを利用されないような組織づくりが必要
- 万が一退職代行サービスを利用されたら、適法性のチェックを行なった上で拒絶せず手続きを進める
今後、退職代行サービスは益々需要が高まることが予想されます。人事担当者の皆様は以上のポイントを抑え、スムーズな対応が求められるでしょう。
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Written by採用GO メディア編集部 阿部