損?得?人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)のメリット・デメリット

人材不足を背景にした国内企業の倒産は、2018年1月から11月で362件に登り、過去最多を更新しました。企業が倒産を免れるためには、従業員の労働条件改善や新たな評価制度の導入によって離職率を下げ、人材の確保をする必要があります。このような状況を受け、政府は「人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)」を設定しています。人事なら知っておきたい、新たな人事評価制度の導入の際に利用できる「助成金制度」についてみてみましょう。

人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)とは

 

人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)は、生産性向上や離職率の低下などを図った事業主に対して、最大130万円の助成を行う制度です。事業主は、生産性向上のために能力評価を含む人事評価制度を整備したり、定期昇給等のみだけではなく能力評価に基づいた、わかりやすい賃金制度を設ける必要があります。具体的にいうと、全ての従業員を個人の能力に基づいて適切に評価し、モチベーションアップや賃金アップにつながるような賃金制度を構築しよう!ということです。このような制度を整備し、人材不足を解消することが、人材確保等支援金(人事評価改善等助成コース)の最大の目的です。

以前は、「人事評価改善等助成金」という名前で独立した助成金制度でしたが、平成30年4月1日から「人材確保等支援助成金」に統合され、「人事評価改善等助成コース」という名称になっています。

 

 

助成金の概要 〜制度整備助成・目的達成助成〜

 

人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)には「制度整備助成」と「目的達成助成」という2種類の助成があります。それぞれの概要、支給金額や支給要件は以下の通りです。 

 

1. 制度整備助成

〈概要〉

  • 事業主が、生産性向上のための能力評価を含む人事評価制度2%以上の賃金のアップを含む賃金制度を整備・実施した場合に制度整備助成が支給されます。

 

〈支給金額〉

50万円

 

〈支給要件〉

「人事評価制度等整備計画」を作成

  • 計画を作成し、事業所管轄の労働局に提出します。

② 対象者全員への人事評価実施

  • 評価制度の対象となるのは、短期間雇用者と時短勤務者を除いた全ての従業員です。フルタイムに近い勤務であれば、アルバイトやパートも全員が対象となります。

③ 労働者個人の能力や努力の姿勢などを評価する評価制度の構築・運用

  • 年齢や勤続年数のみではない評価基準の設定が求められます。

④ 個別に2%以上の賃金アップ

  • 新たな評価制度によって対象者が一定の評価を受けた際には、評価後の改定された賃金が2%以上増加するような制度でなくてはなりません。
  • 賃金増加率は、企業全体ではなく対象の従業員別に計算されます。

 

 

2. 目標達成助成

〈概要〉

  • 制度整備助成に加えて、生産性や賃金・離職率などのすべての目標を達成した場合に目標達成助成が支給されます。
  • 人事評価制度等の適切な運営がされたことで目標が達成されなくてはなりません。
  • 支給されるのは、計画の認定申請から3年経過後です。

 

〈支給金額〉

80万円

 

〈支給要件〉

① 制度整備助成を引き続き実施していること

  • 整備した評価制度を継続して運用している必要があります。

「生産性要件」を満たしていること

  • 「生産性要件」とは、助成金の申請を行う直前の会計年度の生産性が、その年度の3年前と比べて6%の伸びがあることをいいます。

③ 3年後の賃金が2%以上増加

  • 人事評価制度を実施した前月に従業員に支払った給与よりも、制度の実施から3年後に支払った給与が引き続き2%以上増加している必要があります。

④ 離職率が計画時と比べて30%以下であり、低下している

  • 評価対象者が301人以上の企業は、人事評価制度の実施から1年後の離職率が1%以上減少している必要があります(300人以下の企業は現状維持)。

  

助成金支給までの大まかな流れ

 

助成金の受給に至るまでには以下のプロセスが必要です。

 

人事評価制度等整備計画の作成・提出(計画の認定申請

  • 計画を作成したら、本社の所在地を管轄する都道府県労働局へ期間内に提出します。
  • ハローワークに提出できる場合もありますので、計画の提出先を労働局に確認すると良いでしょう。

 

②人事評価制度計画の整備

  • 労働局から人事評価制度等整備計画の認定を受けたら、その計画に基づいて人事評価制度等を整備します。
  • 労働協約もしくは就業規則に明文化します。

 

③人事評価制度等計画の実施

  • 労働協約もしくは就業規則に明文化したら、人事評価制度等を実施します。
  • すべての対象労働者への実施が必要です。

 

制度整備助成の支給申請

  • 制度整備助成の支給申請提出期間は、整備した計画に基づく賃金が最初に支給された日の翌日から数えて2カ月以内となっています。
  • 本社の所在地を管轄する都道府県労働局長へ提出します。

 

制度整備助成の助成金支給

  • 事業主が、人事評価制度と2%以上の賃金アップを含む賃金制度を整備し、実施した場合に50万円が支給されます。

 

⑥目標をすべて達成

  • 制度整備助成の支給以後も適切に人事評価制度を運用し、
  • 生産性の向上
  • 賃金の2%以上アップ
  • 離職率低下の目標

3つすべてを達成した場合に、目標達成助成の支給申請ができます。

 

⑦目標達成助成の支給申請

  • 目標達成助成の支給申請には、提出期間があります。
  • 提出期間は、人事評価制度等整備計画の認定申請の3年後の日の翌日から2カ月以内です。

 

⑧助成金の支給

  • 目標達成助成の金額は80万円です。制度整備助成の50万円と併せると合計130万円の支給となります。

 

(参考:厚生労働省「人材確保等支援助成金(人事評価改善等女性コース)のご案内」)

 

メリット・デメリット

 

メリット

人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)のメリットは主に以下の3つが上げられます。

  • 従業員のモチベーション上昇
  • 離職率の低下
  • 生産性アップ

能力や努力などを評価する人事評価制度によって、従業員が正当に評価されていると感じることができれば、従業員のモチベーションは上がるでしょう。納得性の高い評価制度を作ることは、従業員の定着促進に良い影響を及ぼし、離職率の低下にもつながります。一定の評価を得ることができれば賃金が2%上昇することが就業規則に明記されているため、従業員は良い評価を得ようと企業にコミットした働きをするようになるとも考えられます。これにより生産性が上昇すれば、企業の業績も上がります。

 

 

デメリット

人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)のデメリットは主に以下の2つが上げられます。

  • 実施項目が多く複雑
  • 支出面の負担が増える可能性

この助成金制度を受給するためには、書類を提出するだけでなく、従業員の合意のもとに新たな評価制度を作り、決定事項を就業規則に明記する必要があります。さらに、受給できる助成金の種類は2種類あり、それぞれで支給要件が異なります。特に、申請期間や目標達成のために定められた期間などは、各項目ごとに換算方法が異なります。そのため、ハローワークや社会保険労務士、中小企業診断士などの専門家に相談しながら十分に検討した方が良いでしょう。

デメリットの2つ目について、助成金がもらえるのに支出面の負担が増えるとはどういうこと?と疑問を感じている方もいると思います。これは、賃金アップ分を全て助成金で賄えるというわけではないためです。支給要件には「2%以上の賃上げ」が入っています。制度整備助成、目標達成助成がそれぞれ1回限りの給付であるのに対し、賃上げは就業規則に明記して、長期的に行う必要があります。例を挙げると、年収300万円の社員の2%賃上げは6万円の負担増となり、社員が10人いれば60万円の負担増となります従業員の賃上が分は助成金だけでは賄いきれないため、新制度の導入により業績がアップした分を賃上げ分に回す必要があります。そのため、助成金の受給のみを目的としている企業は注意が必要です。

まとめ・注意点

 

いかがでしたでしょうか?最大130万円もらえる!と聞くととても魅力的に感じますが、デメリットも十分に存在します。そうはいっても、業績向上のために新しい人事評価制度や昇給の制度を導入して、社員のスキルアップ・モチベーションアップを図りたいと考えている人事の方には、人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)はおすすめです。いきなり制度を変えようと思っても、機会がなければ制度変更は難しいものです。その際に、人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)を利用することは、良いきっかけ作りとなるでしょう。

人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)を受給しようとする際は、

  • 従業員の合意のもとで制度を新設できるか
  • 長期的に制度を継続できるか
  • 業績がアップしたら、従業員に賃金アップで報いることができるか

などを慎重に考慮しなければなりません。本気で助成金の導入を考えるのであれば、社会保険労務士などの専門家に相談しながら、十分に検討するようにしましょう。

 

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Written by 採用GO 編集部 渡辺

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