
最近人事界隈で注目されている、戦略人事というワード。しかし一口に戦略人事と言っても、世間では様々な解釈の下に話されているのが現状です。
今回はそんな戦略人事について、本来の定義からメリットやポイントなども含めて徹底解説していきます。
戦略人事の定義
戦略人事の本来の定義は、一言で言うと「経営戦略に寄り添う人事」です。1990年代にデビット・ウルリッチが提唱した考え方と言われています。これまでの人事は企業母体が大きければ大きいほど、閉塞的であり経営陣から独立していました。しかしこれからの人事は、経営戦略に寄り添って業務を行う必要があるのです。
なぜ人事は戦略的でなければならないのか
人事が戦略的に変化しなければならない理由に、産業の変化が挙げられます。
高度経済成長期には「終身雇用」「年功序列」など、当時の大量生産方式の産業に合わせた人事方針が採られていました。そしてこの人事方針は、大量生産方式が主流であった当時においては「戦略的」でした。
しかし現在の産業は「同じモノを多く作れば売れる」という時代ではなく、「他製品と差別化したり付加価値を付けることでモノが売れる」というように変化しています。したがって人事方針も「経営陣に言われたことを淡々とこなす」から、「経営陣の考え方と連動し、主体的に業務を行う」にシフトしていく必要があるのです。
「守りの人事」から「攻めの人事」へ
つまり、従来の「守りの人事」から「攻めの人事」へ移行していく必要があるのです。分かりやすくするために、外国人労働者採用を例に考えてみましょう。仮に政府から、一定数の外国人労働者を採用しなければならない旨の通達を理由に、外国人労働者を採用するという場合には「守りの人事」です。一方で通達等によってではなく、グローバル事業の売上増強のために外国人労働者を採用するという場合には、「攻めの人事」と言えます。
戦略人事のメリットとは?
戦略人事のメリットは、経営状況に応じた人材活用が可能になるということです。戦略人事では経営戦略に応じて人事戦略を行うため、スピード感のある経営が可能になります。また、孤立する傾向にある人事部が経営に寄り添うことで、人事部の孤立化を防ぐことができます。
戦略人事にまつわる理想と現実
戦略人事にまつわる理想と現実には、大きな乖離が起きています。
『人事白書』(「日本の人事部」調査・集計 2018年)によると、「戦略人事は重要である」と回答した企業は全体の9割近くです。しかし、「人事部門が戦略人事として機能している」と回答した企業は全体の5.5%であり、理想と現実に大きな開きがあることが覗えます。戦略人事の重要性を認識している一方で、日々の業務に追われるため、実際には戦略人事として機能していない、というのが人事部門を取り巻く現状です。
戦略人事に必要な4要素
戦略人事を提唱したウルリッチによると、戦略人事には人事が果たすべき4つの役割があると言います。その4つの要素が以下の項目です。
- 戦略パートナー
- 変革のエージェント
- 人材管理のエキスパート
- 従業員のチャンピオン
それでは、1つずつ説明していきたいと思います。
・戦略パートナー(Strategic Partner)
戦略パートナーとは、人事が経営戦略や人事戦略に合致するような組織設計・制度設計などを行うということです。従来のルーティンオペレーション業務に留まらず、より戦略的に業務遂行を行う必要があります。
・変革のエージェント
変革のエージェントとは、人事戦略や組織設定を企業理念やビジョン、行動規範などに合致するように策定するということです。人事戦略を策定する際に企業理念などが宙に浮いてしまうこともありますが、戦略人事においては企業理念なども意識した人事戦略の策定が必要になります。特に中途入社員については企業理念などが浸透しにくく、人事戦略でカバーすることが重要です。
・人材管理のエキスパート
人材管理のエキスパートとは、人や組織を統括し、業務効率を最大化させるということです。業務効率を最大化させることによって、企業全体としてのパフォーマンスが向上します。これは経営陣にとって重要なポイントです。人事が経営戦略に寄り添う以上、社員・組織の配置・転換などの際には業務効率の最大化を図ることが重要です。
・従業員のチャンピオン
従業員のチャンピオンとは、従業員の声に耳を傾け、従業員の意欲を高める組織設計を行うということです。従業員のモチベーションを高く維持しなければ、従業員の意欲低下・パフォーマンス低下に繋がり、離職も起きかねません。人事は従業員の声に耳を傾け、組織設計などに反映することで、従業員の声を反映することが重要です。
戦略人事成功の鍵を握る3者
戦略人事の成功には、経営者・人事・従業員の3者の意識改革が必要です。
・経営者
経営者が設定した経営戦略が明瞭でなければ、戦略人事は失敗に終わります。戦略人事とは経営戦略に寄り添った人事戦略を行うことです。したがって、経営戦略が明瞭でなければ人事戦略を策定することができなくなります。
・人事
経営戦略をいかに人事戦略に落とし込めるかは、人事担当者の手腕が問われる部分です。明瞭な経営戦略を経営者が設定していても、人事担当者の力不足により、結局は戦略人事として機能しない例もあります。また、人事担当者間においても「戦略人事が必要である」という共通認識を持っておく必要があります。
・従業員
従業員の理解無しに戦略人事は機能しません。戦略人事への移行によって組織変革が起きるため、変化を嫌う従業員にとっては戦略人事を受け入れられません。大きな変革を起こす際には、従業員への説明・理解が必要不可欠です。
まとめ
いかがでしょうか。戦略人事は重要視していても、未だ実行には至っていない多くの企業があります。ぜひ今一度自社の人事戦略を見直し、戦略人事の数少ない成功例を導き出してください。
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Written by 採用GO 編集部 藤原
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